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「箱の中」
来月2日よりあべのハルカス近鉄本店にて個展を開催させていただきます。

実は、故郷の大阪では初個展となります。

大学卒業10年の節目にこのような機会に恵まれた事を嬉しく思います。

展覧会中は全日在廊しております。
御気軽にお声掛け下さい。










釜 匠 洋画展 「箱の中」


私は絵を箱だと考えている。

画家はその箱の中に想いを込める。

しかし、それは空想や嘘でしかない。

どれだけ美しくても絵の中の林檎は食べられないのだ。


しかし、時としてその空想は現実に。

そして、嘘は真実に成り得る。

それが出来るのは画家ではない。

それは"箱の中"を覗き込んだあなたにしか出来ないのだ。


釜 匠



2017年8月2日(水)~8日(火)
※作家在廊日 8月2日~8日
10時~20時 (7日は19時、最終日は17時閉場)

あべのハルカス近鉄本店 タワー館11階アートギャラリー
http://abenoharukas.d-kintetsu.co.jp


お問い合わせ
COMBINE office         
http://www.combine-art.com/
office@combine-art.com

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童蛙(ワラベガエル)


「童蛙(ワラベガエル)」※1

和名 ワラベガエル (ヒキガエル科)       
英名 Japanese child toad           
採集地 京都市右京区 嵐山 渡月橋       
採集環境 台風通過後 ゴミの散乱した渡月橋の上  
採集日  2013年9月16日            
採集者  釜 匠                 
備考 頭胴長約15cm 全長約30cm





2013年9月に訪れた台風18号により京都桂川が増水し濁流が嵐山を襲った。

その後水位が下がり濁流に飲み込まれていた渡月橋は無事その姿を現したが、
橋の上には上流から流されてきた沢山の流木や瓦礫が残されたままだった。


当時、避難指示区域に住んでいた私は川の様子を見るために早朝の嵐山を訪れていた。

そして渡月橋の上で"それ"を見つけた。

一見するとただのヒキガエルに見えたが、傍に寄るとすぐにその特異な姿に気付いた。
私は思わず"それ"を抱えて家へと走った。


私は"それ"を「童蛙(ワラベガエル)」と名付け飼育する事にした。


その後3年半にも及ぶ生体の飼育と現地調査の末、このカエルの生態が少しずつ明らかになってきた。

この種を発見した嵐山周辺を捜索したところ、生体の発見こそ叶わなかったものの本種が張り付いたと思われる特徴的な痕跡が保津川下りに使用される船の船体と嵐山を南下した松尾橋の橋脚から多数見つかった。

おそらくこの種は流れの緩やかな嵐山周辺で繁殖を行うため保津川下りの船に張り付いて亀岡から嵐山まで南下してきていると思われる。

更に、近年桂川近辺では河原でのバーベキューによるゴミ問題が取り沙汰されており、実際に河原には多数の食べ残しや包装のゴミが散乱している。

その量は凄まじくその影響で周辺にはカラスが大量に発生している。

ゴミが多数放置される松尾橋の橋脚周辺にも童蛙の痕跡が多数見られることから、童蛙もこの食べ残しを目当てに松尾橋まで南下するようになったと考えられる。

流れが緩やかで水量の豊富な嵐山と、食料が豊富な松尾橋周辺。

特に後者の人為的な食料の増加が本種に与えた影響は大きい。


観光地間の移動による事故の増加、カラスに捕食されることによる個体数の激減と本種を取り巻く環境は悪化の一途を辿っている。





「童蛙の水槽」※2


この度、京都BAMIギャラリーで開催される企画展示『発見?京都!未確認生物UMA展』におきまして、
3年半に及ぶ生体の飼育によって明らかになってきた童蛙の生態を発表させていただきます。
更に、実際に飼育している個体を水槽ごとギャラリー内に展示致します。

この貴重な生物を是非その目でご覧になって下さい。





更に、この企画展では7人の作家による未確認生物の報告が展示されます。
京都に生息する(?)UMAを是非その目で目撃して下さい。







↓展示詳細↓

■『発見?京都!未確認生物UMA展』
 2017/06/08-06/19
 OPEN 12:00-18:00
 期間中無休

■会場
 BAMI gallery
 〒600-8824
 京都市下京区二人司町21番地
 TEL 075-754-8154
 office@combine-art.com

■出品者
 釜匠 佐野曉 公庄直樹 松本央 遠藤良太郎 太田夏紀 岡部賢亮



※掲載作品情報

1、「童蛙」    2017/273*220mm(F3)/木パネルに麻布・アクリル絵具
2、「童蛙の水槽」 2017/318*410mm(F6)/木パネルに綿布・アクリル絵具


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『共棲』終了致しました。
昨日27日をもちまして、個展『共棲』無事終了致しました。
御越しくださった皆様、誠にありがとうございました。





会場である天満屋さんは、高松天満屋があった頃に個展デビューをさせていただいた会場だという事もあり、特別な思い入れがあります。
昨年の岡山天満屋での個展も、デビューから応援して下さる方々への御礼を込めた凱旋をさせていただきました。

そして今回は福山天満屋にて個展。
三度目の天満屋さんです。

正直申しますと前二回に比べると厳しい状況ではありました。

しかし内容の濃い時間でもありました。

私自身のこれまでを俯瞰して振り返り、これからの歩みの方向性を決定づける1週間になりました。

次の作品、個展、年末へ向けて力強く進む事が出来ます。



今回の個展は3月だったので、ちょうど卒業シーズンでした。
大学を卒業して10年。

「10年というサイクルで時代は変わる」

と昔教えられました。


私自身も根本的に変わっていかなければならない。
そう決意させていただける1週間でした。

本当にありがとうございました。









宿泊していた部屋が角部屋だった事もあり、窓を開ければ目の前に福山城という贅沢を味わいました。

近頃日の出前に起きるようになったので、起床してから窓を開けると薄明かりに福山城。





そこに朝日が当たると城の白い壁が輝き、最高に美しかったです。

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共棲
福山天満屋さんにて開催となる個展『共棲』

いよいよ明日からです!





本日、無事搬入作業を終えました!





前回ブログでご紹介した掛軸も展示させていただきました!





気付いてみれば今回はペンギンを一番多く描きました。
どのような世界にどのように描かれたか、是非御覧になってみて下さい。

私は展覧会中、全日在廊しております!



↓以下詳細↓

釜 匠 個展 「共棲」(きょうせい)
■2017.3.22 (水) - 3.27 (月)
■10:00~19:00(最終日は17時閉場)
■福山天満屋 6階 アートギャラリー
■http://www.tenmaya.co.jp/fukuyama/access.html
■ステイトメント

人として生きていると人とばかり出会ってしまう。
それを窮屈に感じていた幼い頃の私は友達と遊ばずに近所の河原で生き物を探して過ごした。
人以外の生き物を見る事で、ようやく自分もヒトという生き物なのだと実感できた。
私が動物ばかり描くのは彼等を愛して止まないからだけではない。
彼等を描く事でヒトという生き物を描きたいと願うからだ。

釜 匠

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掛軸制作
この度、大変貴重な機会を戴き自信初となる“掛軸”を制作させていただきました。



高校で油彩、大学でアクリル絵の具と出会い、その後いわゆる洋画家として活動を始めて10年経とうとする節目に訪れた、人生初の“掛軸”制作。

今回はその悪戦苦闘の挑戦を書き記しておきたいと思います。





掛軸については学生時代に日本美術史で少し学んだのと、美術館で名作と言われる作品を少し見た程度でしか触れた事がありませんでした。

特に軸を実際に作る“軸装”に関して言えば、全くの無知です。

そんな私に果たして掛軸が制作出来るのか…



何から手を付けていいのかもわからない状態の私は、まず自分が描くという前提で実物の掛軸を見て廻る事から始めました。

見る上で注意したのは、美術館にある名作の掛軸だけではなく、実際に現在売買されている“現代の掛軸”も沢山見ておくという事でした。

タイミングが良い事に美術館では『若冲展』が開催中で、京都という立地柄もあり現代の掛軸を見る機会にも事欠きませんでした。



多くの掛軸を見て、描きたい絵柄が漠然と浮かんできたところで次に用意しなければならなかったのが支持体である“和紙”。

これに関してはギャラリー内の作家である阿部君と八木君にご協力いただきました。

画材店巡りから和紙選びにドーサ引き(描く前に和紙に膠を引く)、描く上での注意点等、実際に経験のある二人からアドバイスをいただきとても助かりました。





<八木君にご尽力いただいたドーサ引き>




和紙の準備が整い、いよいよ実際に描く段階へ…!

ここまでの工程でも新たに学ぶ事が沢山ありとても刺激的でしたが、実際に描くのは更に衝撃的でした。

アクリル絵の具が和紙に染み込んでいく動きは、普段描いているキャンバスとは大違い。

今まで培ってきた経験によってコントロールしようと思えば思うほど、酷くなってしまう手元に愕然としました…

更に、それよりも愕然としたのは描いた内容である絵柄そのものの“見え方”でした。



初めて描いた本画は、今まで描いてきたアクリルのタブロー作品の延長線上で描いたような内容でした。

これでは結局“支持体がキャンバスから和紙に変わっただけ”でしかありません。

今まで描いてきたタブロー作品のように(私の癖とも言える)要素の多いガチャガチャした絵柄になっていってしまい、掛軸のもつ空間性を殺していってしまいました。



これではダメだと思い、2枚目では要素を極力排した本画を描きました。



1枚目よりもシンプルに描いた2枚目が完成に近づくにつれて、次の問題にぶち当たりました。

「描いた絵がのっぺりと平坦に見える」

これには更に愕然としました…

描いたモチーフがすべて同じ線(同じ層)上に描かれて見えてしまう。



和紙に描いてみて一番感じたのはキャンバスにはない、素材そのものの奥行き感でした。

それは和紙が薄く透けて見えるのが一因だと思われますが、そこに絵の具を置くと、
キャンバスで感じる“乗せる”という感じだったものが、和紙では“染み込む”という感じに変わります。

染み込み具合はその条件(絵の具の濃さや水分)によって変わります。

水分が少なければあまり染み込まずに和紙の表面に留まり、
水分が多いと和紙の“奥”の層へと染み込んでいくような感覚です。



私が和紙に感じた“奥行き”はこの染み込み具合から生まれる多層感(レイヤー感)からくるものでした。

しかし、残念ながら描いた本画はその多層感を全く生かせずに終わりました。

更に、当初の目標であったシンプルにという課題も個人的には満足のいく結果になりませんでした。



このままではダメだ。枚数重ねて改善されるような問題ではない。

そう思った私は一度筆を置きました。

そこからは更に沢山の掛軸を見る時間を過ごしました。

特に数年前に見た竹内栖鳳の展覧会の画集を食い入る様に見ました。



そして、改めて掛軸制作に入る前に幾つかの決断をしました。

1つ目は、今までのタブロー作品の延長線上として捉えずに、全く新たなものとして捉えもう一度初心に戻って取り組む。

2つ目は、沢山目にしてきた掛軸に見た日本画の印象や技法を実際に表現できるか試みて体験する。

3つ目は1つ目に近いですが、取り組み方自体をタブロー作品のような固く完成したものを初めから望まずに、もっと柔軟で即興的な要素を取り入れる。

というものでした。



以上のことを踏まえて制作したのが3枚目の本画である『家守図』(やもりず)です。





<家守図>



要素を極力排した絵柄で空間を生かし、ヤモリがまるで掛軸の上を這っていくような様子を描きました。
更に、1匹だけ腹を見せて描く事で掛け軸の裏を這うヤモリを描き、和紙を2層に使う事を試みました。

下描きでは5匹居たヤモリも最終的に3匹となったのですが、
この引き算という作業は、それまで足し算に次ぐ足し算で絵を描いてきた私にとっては非常に怖い行為でした…

しかしその甲斐あってか3枚目にして初めて手応えを感じる作品となりました。



4枚目は、3枚目では出せなかった和紙の多層感を体感するために水墨画を描きました。





<樹の河>


“たらし込み”等の日本画特有の技法にも挑戦し、
それまで何とかコントロールしようとしていた絵の具の和紙上の動きをあえて放棄し絵の具の動きに任せてみたりと、新たな試みも柔軟に取り入れるようにしました。

この頃から、

“コントロールできない不自由さ”が“コントロールしない自由さ”へと形を変え、タブロー作品とは全く違う“描く楽しさ”を強く感じられるようになりました。

まだまだ課題は多いですが、何かヒントが得られたような気がしています。





さて、

今回軸装させていただいたのは3枚目に描いた『家守図』という作品です。

軸装に際して、有り難い事に岐阜県の工房に実際に見学させていただき生地選び等に立ち会わせていただきました。









ここにもまた新たな刺激が沢山あり、目の回るようなひと時を過ごさせていただきました。

聞く事見る事初めてだらけで楽しかったです。

工房からの帰り道は、完成した掛軸を想像し思いを巡らせていました…







そして先日、ついに『家守図』の軸装が完成したので実物と対面してきました!!

それがこちらです。






思わず「おぉ!」と感嘆の声が出ました。









それは自分が描いた本画がどうのというのではなく、それを取り巻く軸の持つ威力と風格、
そして、すべての作業が1つのベクトルへ向かって動く事によってはじめて完成する掛軸という様式の面白さと美しさに感動しました。



実物のお披露目後に、掛軸はやはり床の間にということで実際に床の間をお借りして撮影をさせていただく機会にも恵まれました。







それまで私が学んできた西洋絵画と違って掛軸は絵の内容だけでなく、
その周りの空間(場所、季節、人)を含めることにより日本で遥か昔から行われてきたインスタレーションなのだと、
掛軸を制作する一連の流れを体感して理解出来ました。









この貴重な経験は、これからの掛軸制作だけでなくタブロー作品にも強く影響を及ぼすのではないかと感じています。

今回はまさに悪戦苦闘しましたが、小器用になり悪戦苦闘を避ける事が上手くなってしまっていた私にとっては必要な経験だったと思います。

このような貴重な機会を戴けた事を本当に嬉しく、有り難く感じています。







大変長くなってしまいましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。

今回のブログでは洋画家が初めての掛軸に悪戦苦闘した様子をご紹介させていただきましたが、
これは何よりも自身の忘備録として書き記しておきたいと思いました。



今回の掛軸だけに留まらず、今年は沢山の挑戦が待つ1年になります。

新たな課題にぶつかることも沢山あるかと思いますが、今回の経験を糧にして立ち向かっていきたいと思います。

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