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リミッター






2月の岡山天満屋さんでの個展まで残すところ3ヶ月と少しです。



有り難い事に、
最近は家から出るのが億劫になる程制作に没頭することが出来ています。

娘の運動会も、どこか上の空(失礼)で作品案に想いを馳せていたりします。

もともと作品案は多い方だと思うのですが、最近は以前とは比べ物にならない程生まれます。

自分の遅い筆をこれ程煩わしく感じた事はないです…








さて、

珍しく好調ぶりをわざわざ自分で話したのですが、
それには理由があります。


最近好調だと気付いたというのは言い換えれば、最近まで好調では無かったとも言えます。

それは“好調だと自覚することでようやく自身の不調を自覚できた”という事です。


不調と言いましても、上手く描けなかったといった類いのものではありません。

自分に対して自分で“ある種の制御”をかけていたと表現した方がいいのかも知れません。








話は前回の個展後まで遡ります。

2014年の5月頃です。



次回の個展やこれからの展開を打ち合わせした際に、

「好き勝手に、自由奔放に描いて欲しい」

という趣向の話が出ました。



正直最初はこの言葉の真意が掴めませんでした。

「?」

「今まで散々好き勝手にやってきたのになぁ」

というのが最初の私の反応でした。



しかしこの言葉は私の中に小さな“しこり”として残りました。

それから制作している最中に何度もこの言葉が浮かんでは消えました。



年を跨ぎ2015年になりギャラリーがリニューアルし、
私は「女子高生物」「箱家」と2度個展をさせていただきました。

この頃には私の中にあった“しこり”は無視できない大きさになっていました。

「あの言葉の真意は何だったんだろう」

と思い始めていた頃に打ち合わせで再度、

「好き勝手に、自由奔放に」

更に、

「オモチャ箱をひっくり返したように」

との話が出ました。



それから私は自宅の画室に籠り、制作に没頭しながらずっと考え続けました。

睡眠時間は減り、何に悩んでいるのかわからない悩みに頭を悩ませ続けました。



そして、今までの自分の作品達を客観的に見つめました。

初めての個展で学生時代から描きためた作品を一堂に展示した後、


“お弁当”

“箱舟”

“化石”

“金魚”

“お菓子”

“女子高生”

“箱家”


と今まで個展を開催してきた作品達を見て、ようやくある事に気付きました。




それはその個展毎の“括り(くくり)”の強さです。




個展をする際に会場を一つのコンセプト等で括って展示するというのは重要な事です。


私は大変有り難い事に、初めての個展で過去作と新作がほとんど手元から離れてくれたため、
2度目の個展「ランチボックス」からオール新作で挑ませていただける状況になりました。


手元に何もない状態で1から作っていくという漠然とした状況を打破するために私はこの“括り”に頼り委ねる事を選択しました。

まず“括り”を決め、その“括りの中で描きたい作品を選んだり考える”といった状態です。

その後も同じ状況が続き、個展の度に新たな“括り”を設定していきました。



繰り返しますがこの“括り”というのは重要だと思います。

個展を展開していく上では多かれ少なかれ誰でも考える問題だと思います。

しかしそれはあくまでサポート的な役割のものであって、作品達の根幹にまで侵食させてはいけません。



作品を活かすために添わせていたはずの“括り”は、私の中でいつのまにか先行してしまい、
作品を無理矢理詰め込む“枷”のような存在になっていきました。



作家によってはこの“括り”に頼る事で成立する場合もありますが、私にとっては違うのではないかとようやく気付いきはじめました。



まだ“括り”など何もなかった初めての個展。

学生時代から描いてきた作品を“ただ列べただけ”のような個展。

しかし、思い返せばあの展示にはきちんと芯があったのではないかと考えはじめました。

むしろ今となっては私の芯が一番色濃く表れていた気さえします。


あの個展の後、

私は“括り”を作って各要素を掘り下げる事で本流をより強固な物にしようと考えていました。

それがいつのまにか本流を無視したものになっていたのかも知れません。

当たり前のような話ですが、その事に最近ようやく気付きました。



「好き勝手に。自由奔放に。」



それは、
理解していたつもりの言葉の真意が理解出来た瞬間でした。



括りに拘らずに“描きたいものから描く”

そんな至極当たり前の事に立ち返った途端、

栓が抜けたように作品案が溢れ出てきました。



ようやくリミッターが外れたので、

あとは時間との戦いです。



正直余裕は無いですが、今はただ楽しいです。



この“楽しい”が溢れるような個展にしたいです。







勿論、今までも充分楽しんで制作してきていました。

しかし、今回自身を省みる事によって、より楽しく描き、見る人にもより楽しんでもらえるような作品を描いていけるようなステップアップに繋がった気がします。

天満屋さんでの個展前だからこそ、このような機会が訪れたのではないかと思います。




まるで

“オモチャ箱をひっくり返したような”

個展になるようにと考えていますので、

皆様どうぞ楽しみにしていて下さい。




少しだけ書くつもりが、あれよあれよと気付けば長くなってしまいました…

お付き合い有り難うございました。

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