June 18,2019
本日飾り付けが無事終了しました。
明日より6月30日まで個展を開催させていただきます。
前回個展よりちょうど一年ぶりとなります。
それまで描いてきた作品の18点が見れますし、
今回初披露の作品もございますので、
是非見に来て下さい。
前回個展では、私の私淑している画家である、
レンブラントの模写を中心に据えた作品構成ですが、
今回はそこから少し発展した作品を展開しております。
今展覧会のメイン作品としては巨木、古木を描いた
作品のシリーズになります。
私たち人間の時間間隔よりはるかに
長い年月を生きてきた巨木たちは
見ているだけでその存在感、生命力に圧倒されます。
その力に少しでも近づければと思い描いてみました。
あらゆる方向へ無作為に伸びているかのような枝、
長い年月雨風を耐えしのいできた樹皮、
青々と茂る葉、
そのどれもがきっと偶然そうなったのではなく、
何らかの理由や法則にのっとった必然の形であり、
自然が作り出した造形物だと、
描きながらあらためて思いました。
おそらく人間である私には彼らが放っている情報の
少ししか理解できていないとは思いますが、
私が触れることができた
その圧倒的な存在感、魅力が作品を通して
皆様へ伝わればと思います。
ここから少し長くなりますが、今展覧会のタトルである、
「アナログ色の世界」とそのステイトメント
について書かせてください。
別に大きな意図があるわけではなく、
当たり前のこと書いているだけなのですが、
古いアナログな方法を使い絵を描く。
時の流れの中で忘れてしまいそうになる、
匂いや音、触感、
その時の心の動きをとどめておけそうな
気がするから。
と書きました。
自分の体で感じたことを
自らの手と目を使って描くという
絵画作品というのは昔からある
古いアナログなメディアです。
現代において、絵画がもはや先端の芸術ではないにしても、
絵画にしか伝えることのできないことも
あると思います。
ここからすごく乱暴に私の思う
アナログとデジタルの違いについて
説明していきます。
時計でいうとデジタルは現在の時刻しか
表示されませんが、アナログの場合
大雑把に時間を量として目で
とらえることができます。
音楽の場合、CDなどのデジタルメディアより、
アナログメディアであるレコードの方が
含まれている周波数帯(情報)が多く、
音楽愛好家の間では未だに流通しています。
最も一番情報量が多いのは
実際にライブやコンサートで
音楽を体験することだと思いますが、
もう演奏を聴くのが不可能な場合も
ありますし、より多くの情報を
保存するという意味ではアナログなメディアも
果たす役割があるということだと思います。
絵画作品においても同様に、画集や画像などと
実際の作品はまったく情報量が違います。
特に油彩画。
それはレンブラントの実際の作品を見たときにすごく
感じたことです。
展覧会の時にある画集の図版(画像)
と実際の作品は何から何まで受ける印象が違う。
2次元と3次元なので、当然と言えば当然ですが、
そこから画集(画像)だけでで作品を
見た気になるのはやめようと思いました。
話が少しそれますが
以前、私の教えている学生に好きな作品や
憧れの作家はいるかと尋ねたときに
スマホで画像を見せてもらいました。
データフォルダには、
学生が好きな作品の他にも大量に、
その学生の気に入った画像が
大量に保存されていました。
ですが、肝心の自分の好きな作品の
作者については名前も
知らず、実際の作品も見たことがないということが
判明し、啞然としたことがあります。
インターネット上で流れてくるものを感覚的に
チョイスしているだけで、その作家のことを
調べようとか、深く知ろうと思わないのだなぁと、
自分の学生時代とデジタル世代の学生との違いを感じました。
話を戻しますと、
切り取られた結果だけ(デジタル)を見せられるのと、
結果を含めたプロセスも量として感じられるもの(アナログ)
との差ということなのかと思います。
私がステイトメントで言いたかったことは2つあり、
ひとつは単純に、私は後者であるほうが好みである、
ということ。
もうひとつは、CDなどのデジタル音源が溢れる中、
レコードが見直され新たな役割を果たしている現状と
皆がスマホで写真を撮り、
画像情報が氾濫している現在に
絵画という古いアナログメディアが果たすべき
役割がまた出てきたような気がしたのです。
私がレンブラントの作品を見たときや、
巨木を目の前にした時のように、
連続した量(そのものが抱えている時間や情報など)
が一瞬で叩き込まれるような圧倒的な感覚。
これは体験であり、
知識や理屈ではない感性の世界。
それを再び自分でも味わいたいし、
自分の作品においても少しでも描かれた
具体的な図像以外の何かを感じてもらえたら
幸いです。