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迷彩柄の新作
2020年8月6日(木)より京都のBAMI galleryにて開催される、
【ZERO HOUR exhibition】に新作を2点出品いたします。

絵画における最小規定サイズ、0号のみで構成される本展。
140×180㎜という小さな矩形の中で、
どれだけ自分の世界観を詰め込んで構築し表現できるか。
今回制作した2作について解説していきたいと思います。

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▼一作目

「0の河」
180×140×21mm (H×W×D)
綿布、アクリル絵具、パール、金箔

ZERO HOUR exhibitionに向けて描いた1作目です。
ZERO HOURという言葉は直訳すると0時ですが、
決定的瞬間、または軍事における作戦開始時刻を意味します。

なので今まで描いてたようなものを単純に0号にダウンサイジングするのではなく、
次のステップに繋がるような密度の高いものにしたいと考えました。

また同時期にしていたドローイングも何か本画に生かせないかと考えていた際、
画面を迷彩柄に分割し、現代の風景を構成するような様々な要素を
当てはめていくという手法を思いつきました。

(段ボールや紙ゴミなどにアクリル絵具、鉛筆でドローイング)

今までの「画面の奥に何かがあり、それを水で歪ませる」という手法から
レイヤーを増やしてより複雑に表現できる事と、
周囲の風景に溶け込ませる、つまり無(0)に見せる迷彩を使う事で
ZERO HOUR exhibitionにもマッチするのではないかと考えました。

迷彩といえばアンディ・ウォーホルのCamouflageが思い浮かびますが、
洛中洛外図も金雲によって物理的空間を超越してつなげていき、風景画として成立させる
ある種の迷彩のようだという印象が個人的に強くあったので、
作中の迷彩柄の一部には金箔を押しました。


現代に溢れている物や光景、その下に蠢く0と1のデータの世界。
人間の作り上げたものも自然の圧倒的な力の前では儚く崩れる事、
また、情報化しきった社会により生まれた「歪み」を水滴に託して、
自分の視界を解剖していくような感覚で描いた作品です。


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▼二作目

「層」
180×140×45mm (H×W×D)
ミクストメディア

一作目を描いているときに思いつき、どうしても作りたくなった作品です。
いつも作品を描いている時に感じているレイヤー感覚を、
直接物理的に表現してみようという試みです。


板パネルにカーボンシートを貼り、電子基板を接着。



迷彩柄にカットした台紙に新聞紙を貼り、墨でたらし込みしたもの。
水滴はアクリル絵具で描写。



段ボールを迷彩柄にカットし、アクリル絵具で水滴を描写。



一番上のレイヤーの金を付ける前の段階。
この後、台紙に和紙を貼り金箔を押したものを接着して完成。



横から見ると結構立体的です。


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コロナ禍で大変なご時世ですので移動の際には気を付けつつ...。
可能であれば実際にご覧いただけますと幸いです。

また本展はBAMI gallery公式オンラインストアとも連動しており、
作品画像も細かいところまでUPされているので、
よかったらチェックしてみてください。

▼Online Store

※画像をクリックするとストアが開きます。


■展覧会情報
【ZERO HOUR exhibition】
020年8月6日(木)~8月19日(水)
OPEN 12:00-18:00(最終日16:00まで)
会期中無休

COMBINE/BAMI gallery
〒600-8824
京都市下京区二人司町21
http://combine-art.com/html/gallery/ga_access.php



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アマビエ版画作品について②
先日BAMI galleryのオンラインストアがオープンし、
アマビエの版画を3種類出品させていただいております。

▼画像クリックでページが開きます




さて、前回のブログではアマビエ版画制作についての経緯などを書きましたが、
今回は各作品について創作のプロセスやコンセプトを書いていきたいと思います。


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「アマビエ」について




「アマビエ」 メディウム剥がし刷り版画 版サイズ233×147mm

まずはアマビエのもつ特徴(嘴がある、髪が長い、鱗がある、三本足、など)を頼りに色々とアイディアを出します。
 

伝言ゲーム的に単純化されたり、あるいは誇張されたりするのが

アマビエの面白さだよなぁ...なんて考えたりしながら自分なりのアマビエ像を探ります。



「アマビエ」の原型です。

アマビエは色々な生物の組み合わさった"キメラ"のようで、
「髪が長い」=リュウグウノツカイ?
から想像を膨らませてアマビエとして成立するように描きました。

「三本足」についてはアマビエを発見した人が角度によって三本足に見えた可能性もあるな、とか、

そもそも三本足の動物というのは大変縁起の良い場合が多く、
有名なものでは日本サッカー協会のロゴである八咫烏(やたがらす)がいたり、

中国の三本足の蛙の妖怪、青蛙神(せいあじん)がいたりします。
奇しくも青蛙神は天災を予知する力をもつ...とされていたり。

そういった古来より伝わる伝承がアマビエにも自然と組み込まれたのではないか、、
などと推測して描いていました。


イメージが固まったのでこれを清書します。



もう版画と変わらない線になりました。

この清書を版に反転させてトレースし、製版していきます。

作業工程はYouTubeの方で見ることができるので、よろしければご覧ください。


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「ひょっこり」について



「ひょっこり」 メディウム剥がし刷り版画 版サイズ233×147mm

一枚目の「アマビエ」を考えている時に出てきたものすごく単純化したアマビエを使いつつ何かできないかと考えました。


単純化して可愛らしくなったので、それに合った状況なり仕草なりを考えていきます。
ぱっと思いついたのは何かの物陰から隠れてひょっこり顔を出しているイメージ。
でも一体どこから顔を覗かせているんだ...。

少し初心に立ち返って考えてみました。
なぜ江戸時代から時を超えて、こんなにもアマビエが流行り出したのか。
やはりコロナウイルスという疫病に対して、早く終息してほしいという祈り、祈願の意味合いが強くあると思います。
祈願か...。祈願...。奇岩?

日本にはゲン担ぎと言霊の文化があります。

ご縁がありますようにとお賽銭に5円を入れたり、
受験に勝つためにカツ丼を食べたり...。

ダジャレかよ...と思うかもしれませんが、祈願の意味を込めて奇岩を取り入れてみることにしました。

余談ですが、奇岩も色々あり、今回描いたのは太湖石という石です。
中国蘇州府の太湖から産出される石灰岩で、
湖の波や風雨の浸食を受けて石の表面に多数のくぼみや穴があるのが特徴です。

道教ではその穴が別世界への入口であると考えられているという事もあり、
人間界とは別世界の妖怪アマビエがその穴から見えていたら面白いなと考えました。



奇岩に隠れたアマビエのイメージを固めていきます。



アマビエが見えすぎていたので実際の版ではアマビエの姿はもう少し左寄りにして隠しています。

この原画を版にして刷ったのが「ひょっこり」になります。

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「海の底から」について



「海の底から」 メディウム剥がし刷り版画 版サイズ233×147mm

こちらもデフォルメしたアマビエの姿です。

水面に現れたアマビエの姿が伝承にあるアマビエ像なのかもしれませんが、
アマビエが生きているとして、ずっと水面にいるわけではないだろうと考えてラフを描きました。


(上二つのラフはまだ水面で考えていますね...)

海底からぷくぷくと泡を出して遊んでいるようなイメージが思い浮かびました。

横構図のラフ案でしたが泡が上に向かって登っていく様子が表現しづらいので縦構図にし、
背景に魚のシルエットを描いて空間が広がるようにして清書していきます。



この作品を描いている時にたまたまかけていたラジオから、
ディズニーのリトルマーメイドの曲「Under the sea」が流れてきまして...
本当にたまたまでしたが、もうタイトルはこれしかないと思い「海の底から」にしました。


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如何でしたでしょうか。

創作プロセスを見て少しでも楽しんでもらえていたら幸いです。


2020年6月19日現在、日本では一時は大分おさまったかと思いきやまたじわじわと感染者が増えてきています。

皆さんも、そして自分も気をつけつつ...

早くこの状況が収束することを祈願して。。


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