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宮本大地 ノスタルジアとサウダージ以上に!
先般BAMI galleryで企画した【after90 平成最初の方の人たち】
において、宮本君が書いてくれた文章のある箇所に私はもの
すごくひっかかったというのか?ハッとさせられた・・・


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宮本大地:1991年生まれ


僕は誰でも見たことのある場所やモノの中に小さな世界を
造りあげる作品を描いている。


そこには、現代にあるモノ、過去にあったモノ、現実には
存在しないモノ、様々なモノが自由に組み合わさり詰め込
まれている。そこに表れる世界は、自分の人生の蓄積に
よる世の中の見え方の様に感じる。


作品を描けば描くほど、自分がどういう人間なのか、
何に興味があるのか、自分の人生がどう作品に影響を与え
ているのかが見えてくる。?


1991年生まれ、景気が不安定になる中、両親の共働きも
当たり前となっていた。そのため幼少期は祖母と過ごす
時間が多く、1番初めに絵を描く事を教わったのも祖母
だった記憶がある。


遊び道具はもっぱらミニカーにプラモデルにオモチャの
ロボット。それらを使って自分だけの小さな世界を作り、
没入していた感覚は今の作品と大きく繋がっている。


小中学校の頃には世の技術もどんどんと向上し、身の回り
には小型ゲーム機やノートパソコン、携帯電話、ウォークマン。


モノのハイテク化が進む中で、自分も当たり前に順応して
いると思っていたが、どこかで置いていかれている感覚、
便利になりすぎる事への怖さを持ち続けていた。ネットが
発達し、世の人たちの世界が広がり続ける中、自分の望む
世界は幼少期にオモチャを使って遊んでいた様な、自分の
視界におさまる小さな世界、人と人との温もりを感じる
昔ながらの世界だったのだろう。


そこに感じるズレの中で生まれた過去のモノに対する憧れ
や興味が作品のモチーフの選択に表れている。旧車や
黒電話やレコードなど、自分が生まれる前に活躍していた
モノたち。


そこには作り手の温もりを感じ、憧れを感じ、知らない
からこそ魅力を感じ、自分の理想を重ねる。その世界に
こそリアルを感じ、作品に残したい。描き続ける事で
自身を掘り下げ、理解し、また描き続ける。


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以上が、彼が今の作品制作に至る自らを掘り下げた文脈
なのだが、、、、私が気になった箇所は、、


『旧車や黒電話やレコードなど、自分が生まれる前に活躍
していたモノたち』


この”活躍”という言葉に大きく魅かれた。。。。


所謂、ノスタルジアやサウダージという言葉が大きな
面積として内包できるのだろうが、、ややそれとは違
うなんとも言えない良い香りが文章から立ち上がって
いた。


ノスタルジアとサウダージをwikiでは以下のように
書いている、


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人が現在いるところから、時間的に遡って過去の特定の時期、
あるいは空間的に離れた場所を想像し、その特定の時間や空間
を対象として、「懐かしい」という感情で価値づけることを
いう。


通常は、時間的に未来がその対象とされることはなく、
また対象の負の部分は除外され、都合よくイメージが再構成
される場合が多い。


なお、本人がその時間や空間を実体験したかどうかは必ずしも
問われず、第三者からの情報にもとづいて想起し、さらに自己
の創作した想像を加え拡大しこの感情を持つことも可能である。
また、過去や異空間からもたらされた特定のものや人物に即し、
これを媒介としてこの感情を持つこともある。



サウダージとは、郷愁、憧憬、思慕、切なさ、などの意味合い
を持つ、ポルトガル語およびガリシア語の語彙。ポルトガル語、
およびそれと極めて近い関係にあるガリシア語に独特の単語と
され、他の言語では一つの単語で言い表しづらい複雑なニュア
ンスを持つ。


単なる郷愁(nostalgie、ノスタルジー)でなく、温かい家庭
や両親に守られ、無邪気に楽しい日々を過ごせた過去の自分へ
の郷愁や、大人に成長した事でもう得られない懐かしい感情を
意味する言葉と言われる。だが、それ以外にも、追い求めても
叶わぬもの、いわゆる『憧れ』といったニュアンスも含んでお
り、簡単に説明することはできない。



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宮本君の絵のエンジンは上記言葉をガソリンにしているのは
間違いないが、ただそれだけでもない。私は彼の文章の、、
この”活躍”という言葉に大きく魅かれた。。。。


あぁ、、そうだよな、、キラキラと輝いていた時間。。。


全てには成り立ちが存在する。今が突然現れた訳ではなく、
道程があり、それをリアルタイムで感受していなくても、
その活躍の芳香を誰しもが嗅ぐ事ができる。それらがキラキラ
していた時間、、そして活躍していた証・・・・


私のギャラリーが今後大いに目指さなくてはならないものとは、
私のギャラリーでしかお見せできない企画であり、それは
先般企画した、


after80.90でそれぞれが自らの文脈を深く掘り下げたものを
源泉として、敢えて僅かな日数で伝える作家其々の明確な
プロットによって構築された物語を企画しなくてはないらない。





つまりそれはギャラリーでしか見ることができない、作家の
もっとも濃いエキスであり、私のギャラリーの存在価値に
つなげるべきものだと感じている。。



さしずめ宮本君の個展はその第一弾となる。


通常の彼の作品から、一歩前にでて主語・作家主体を司る
ロボットを挿入し物語を構築してくれたのもその一環から
である。


そして儚くも作品単体はその後も私の商売としての流通上
には存在するが、彼の今回紡ぎだしてくれた物語とその
物語の空間は僅か9日間しか存在しない。



それが今回の企画の最大の要諦だ!!



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宮本大地 「時屋敷-ロボットの旅-」
2017.11.16 (thu) - 2017.11.24 (fri)
OPEN 12:00~18:00
期間中無休

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