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絵巻物


はじめて絵巻物を制作しました。
手元でスクロールしながら鑑賞する絵巻物という絵画形式は、より身近に風景を体感できるように思います。

今回は全面を開いた状態で、来週6月2日(木)より個展「洛西ニュータウン」に展示予定です。



「憶燈舟」 
サイズ281×23.5cm(絵部分229.5×23.5cm)
墨、アルミ泥、岩絵具、顔料

洛西ニュータウンを題材にしたこの絵巻は、伊藤若冲の絵巻「乗興舟」に着想を得て制作しました。「乗興舟」は若冲が淀川の川下りを行った際に見た風景を時系列に沿って描いた絵巻物です。

今回の絵巻では洛西ニュータウンを深夜に散策・取材し、ニュータウン内のいくつかの地区を開発工事完了順に描いています。それまで未開発の山麓地域だった土地に街が誕生し、明かりが燈っていく経過を、現在の風景を用いて、追体験できるよう描きました。

京都市による公的な都市計画として始まった洛西ニュータウンですが、1975年に入居が開始、その30年後には地域の高齢化に伴い、人口減少が始まります。
同じ京都市民にとっても普段、馴染みの少ない洛西ニュータウンが、このまま人々の記憶からも薄れていくのではないか、ということに対してこの街を絵にしたいと思い制作しました。




個展「洛西ニュータウン」
2022/06/02(木)~12(日)
12:00~18:00
※最終日午後4時閉廊

BAMI gallery
京都市下京区二人司町21

どうぞご高覧ください。



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洛西ニュータウン
私が初めて洛西ニュータウンに訪れたのは2年前、同じ西京区に引っ越してきた頃だった。この地では古くから筍農家が営われており、自宅から西に向かうと巨大な竹林がある。その竹林の中、延々と坂道を登っていくと、徐々に視界が開け、洛西ニュータウンの高層住宅群が広がる。「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」の現代版ともいった風景の転換に、その時は妙に高揚した。

1975年、洛西ニュータウンの入居が始まった。1950年代後半から京都市内でも人口増や工業化による乱開発が問題となっていた。そこでタケノコの農業地域として未開発のままだった京都市南西部において、民間に先んじて公的なニュータウン計画が行われた。市街地から遠い山沿いに立地した洛西ニュータウンであったが入居開始から5年で全戸数の60%が入居、最盛期には3万5000人だったものの、現在は若年層の流出に伴い22899人に減少する。当初は京都市営地下鉄東西線が延伸される計画であったが、財政難を理由に頓挫しており、1980年にこの地に移設された京都市立芸術大学は京都駅東部、崇仁地区の再開発事業により2023年、移転する。
現在、京都市において洛西ニュータウンが話題として触れられることはかなり少ない。かつての拡大指向からコンパクトシティと言われるよう都市像は転換していく。突如、山麓部の田園地帯に公共事業として誕生したこの街は激動の変遷を持つ。だが街を歩くと、それとは裏腹に、ごくごく一般的で普遍的な暮らしの風景が広がっている。そのようなこの街を私は記憶し、絵にしたい。

6月2日(木)より個展「洛西ニュータウン」を開催致します。ぜひご高覧ください。

個展「洛西ニュータウン」
2022/06/02(木)~12(日)
12:00~18:00
※最終日午後4時閉廊

BAMI gallery

アクセス
http://combine-art.com/html/gallery/ga_access.php




「New Town」
岩絵具、土絵具、アクリル、墨、顔料
131.5×161.7cm 二曲一隻屏風

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