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2018.04.23 松本央 solo exhibition 『私淑の憧憬』
今回は展覧レポートの代わりに、会期中BAMI galleryへおいで下さった鵜飼 容子さんから、作品に関するお話をお伺いさせて頂くことができましたので、そのインタビュー記事を掲載させていただきたいと思います。






石本>作品のテーマに奇形児を取り上げられているのは何故ですか?



鵜飼>恵比寿様っていますよね、七福神の。七福神には毘沙門や大黒など、インドからやってきた…といわれてる神様もいますし、色んな神様の寄せ集めです。七福神の恵比寿様は可愛らしい感じですが元々は奇形児であるという説もあります。古事記に出てくる“イザナギノミコト”と“イザナミノミコト”の間に最初に生まれて、骨の無いぐにゃぐにゃの子供だったので川に流されて捨てられた、といういきさつがあるといいます。そういったところから、“私なりの神様”を描きたいと思っています。



石本>見る人によってはとても衝撃的なテーマだと思うので、時には誤解を受けられるようなこともあったと察しますが、それでも描き続けておられるのは何故ですか?



鵜飼>そうですね…。以前個展をした時に、年配の方からメールを頂きました。「…ベトナム戦争を連想してしまった。」と…。ですが私は、差別的なものではなく神々しいものを描くような気持ちです。
例えば…ですけど、ルノワールが太った女性を好んで描いたスタンスと変わらないような気がします。その存在意義を尊重して描いているし、奇を衒わないようになるべく柔らかく表現するように心がけています。ただ好きなものを描き続けている、というか…。
でも基本的には今まであまりそういったことは言われなかったですね。自分でもそれを言われたからといって悩むようなこともないかと思います。



石本>作品に登場するほとんどが赤ちゃんですが、これは何故ですか?



鵜飼>特に子供にこだわっているわけではないですが、そのフォルムに惹かれています。面白く描けるならば、大人も描いてみたいです。



石本>描かれているのがほとんど女の子なのは何故ですか?



鵜飼>うーん、やっぱり男性器はあまり描きたくないなぁ、と…(笑)。
他の作家さんで意識せずに描かれる方もいますけど、どうしても目が行ってしまうので…。これを言ったのは初めてですね(笑)。



石本>このテーマを題材に取り上げられたのはいつ頃からですか?



鵜飼>20年近く前、大学の時の版画の授業で見世物小屋みたいな奇形の人たちのフェスティバルの様子の版画を作ったのがきっかけでした。
その頃、「フリークス」という映画を見たことに影響されて作ったのですが、小さな桜の木で作った“木口木版”という版画だったこともあって、露骨に浮き彫りになることも無かったせいか、その時の周りからの反応は特に無かったです。



石本>描き出された当初と今とで、考え方が変わったものがあれば教えてください。



鵜飼>特に変化したものはありませんが、その時々で興味がある部分を画面上に描いているというのはあります。
昔の作品では、ボンテージやガスマスクみたいなのに興味があった頃にそれを人物に絡めて描いたりもしていましたが、今それは動物や植物に変わりました。特にキノコや菌類は興味深いです。
例えば、あの『共生』の上部のグレーの部分、あれは粘菌と呼ばれる菌を描いています。キノコは形も色も様々で面白いですね。ちょっと気持ち悪いところもあるけど面白い。冬虫夏草(『土に棲む』の背景)はまだ見つけたこと無いけど、粘菌はよく見かけますよ!



石本>鵜飼さんは平面だけでなく立体も作られていますが、その二つは同時進行的に作られているのですか?



鵜飼>いえ、現実的な問題として立体を作ると削ったりすることがあるので、削りカスが出てしまうんですよ。そうするとそれが平面についてしまう…ということがあるので…。平面も立体も、同じ一つの部屋で作っているから、どうしても同時進行はできないんですよ(笑)。


   
石本>どうして立体を作ろうと思われたのですか?



鵜飼>もともとは“自分が描いているものを形にしてみたい!”という欲求、衝動からですね。ただ、基本的知識が全く無かったので1年間ほど教室に通って素材のことなどを勉強しました。球体間接人形というジャンルがあって、有名なところだと四谷シモンっていう人とかがいるんだけれど、通ってる教室ではみんな美少女とかの美しいお人形を作っていて、自分だけが違うタイプのものを作っていたのですごく浮いていました(笑)。「大人になってもこんなに人の輪に入れないことがあるのか!!」と辛くて…いつも帰りは飲んで帰って(笑)。“腰のところが繋がっていて、片方の頭が骸骨”というのを作りましたね。



石本>普段はどういったことをして過ごされるのがお好きですか?



鵜飼>いわゆる“サブカルチャー”的なものとかが好きです。普通のニュースや一般には出てこないような事件であったりとか…。ムック本とか買ってしまいます。
割と活字中毒ですね。そういった日々の生活の中から作品へインスパイアされている部分は大いにあると思います。






 …平面のみならず、素晴らしい立体作品も手がけられる鵜飼 容子さんですが、その背景には大変な思いやご苦労があったことを今回お話しをお伺いさせていただいて初めて知ることができました。
“自分の絵を立体にしてみたい!”というその一途なまでの欲求は、ただ一心不乱に作品を制作する意欲そのものとなって、ご自分を奮い立たせておられたのだと思います。
今回のインタビュー内にその名前は出てきておりませんが、DM撮影のために、立体・『マーキング太郎』を鴨川のほとりにて撮影した写真をご覧になられた鵜飼さんが、「なんだか、鴨川のほとりで、太郎が生き生きしているように見えて可笑しかったです・・・。」というメッセージを下さった時に、鵜飼さんの作品に対する愛情をとても強く感じました。

最後に、BAMI galleryへおいでいただき、快くインタビューに応じてくださった鵜飼 容子さんにお礼申し上げたいと思います。ありがとうございました!