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2018.10.21 小橋順明 solo exhibition 「共有地の悲劇 ~昆虫<皿<水<テーブル~」

breath blue

straw +
kappa Chicken(カッパ・チキン)この名前を初めて聞いた、見た瞬間、誰しもがなんの事かと疑問に感じることと思います。彼女は絵を描くにあたり本名を捨て、そして選んだ名前がカッパ・チキンでした。その根拠を尋ねた時、彼女から返ってきた答えとは、「好きな生き物」ということでした。

カッパという空想上の生き物、そして日常的に食する現実的な生き物であるニワトリ、このミックスが彼女の名前となっているのです。実はこの二つの生き物がミックスされた名前に、彼女が絵を描くにあたり自らが求める表現主体を位置付けるものが象徴的に内在されているように私は直感的に感じました。

カッパとは、存在そのもが確認されることのない生き物であり人々の間で永遠に語り継がれ、その存在が固定的に限定されることのない人間共通の想像としての生き物の存在です。そしてこの想像上の生き物は、生死の瞬間が訪れない普遍的な存在として人々の心の中に描きつづけられます。ニワトリとは、決して愛玩されることもなく、人間が日常的に食すためにその命、遺伝子を繰り返し永続させる生き物であり、1固体になんの意味ももたされることはありません。しかし人間共通の食材として存在し、現実的な生死を繰り返すことによって普遍化されていく存在であります。このカッパとニワトリ、二つの生き物の間に存在する象徴的なものとは何か?

現実的に目視できる存在と、各々の想像、心の中に存在する生き物、これは人間自体がもつ現実社会の中での自分と、心の中に存在し決して他人が目視することができない自分という形の関係に酷似しているように感じたのでした。

生死を繰り返し遺伝子を伝播することにより営々と肉体的存在を具現化する人間。しかしその営みの瞬間である自己とはいつか消滅しますが、遺伝子の伝播メカニズムがまた新たな生命を創出し永続されていきます。その営みのメカニズムである遺伝子の伝播とは、肉体のメカニズムのマニュアルが伝播されると同時に、目視することのできない心というマニュアルなきものも同時に搬送されます。その営々と太古から続くメカニズムにより、人間が作り出す社会は変貌を遂げ、それに即応するかのように人間の肉体も、肉体を行使する情報も、それらを形付ける社会も劇的な変化を遂げてきました。ニワトリが品種改良を重ね食文化の変遷に沿ったが如く。

しかし同時に搬送された心はどうなのでしょうか?人間生命が誕生した瞬間から今に至るまで何か劇的な変化を遂げたのでしょうか?太古の人間の心も現代の人間の心も大差はないではと考えます。もしあるとするならば情報と知識の量の差くらいだと思います。この目に見えないものの核とは実は人間生命が誕生した瞬間からそのままのものが現代人にまで搬送されてきたように感じるのです。それは想像上の生き物であるカッパが人々の間で語り継がれるが如く。

現実社会の中の自分、これにはカッパとニワトリのような二つの存在を感じないでしょうか?他人が目視しイメージする自分と自分にしか感じることのできない、自分の中にいる自分。外見と内面という言葉で集約されるかもしれませんが、人間は常にこの二つを自ら持ちつづけなくてはいけない生き物のように感じるのです。この二つの存在、これはどちらが本物なのでしょうか?

人間は物心ついたときから“ずっと話続けている生き物”と感じないでしょうか?他人との会話以外の時間、一人でいる時においてもずっと自分の中にいる自分と話していないでしょうか?そのとき自分の中にいる自分とは欺瞞に満ちた存在ですか?悪い行いを、想いを是認する自分もいれば完全に拒否する自分もいるのではないでしょうか?人間はこの自分の中にいる自分、内面と生涯語りつづける生き物だと私は感じるのです。

この誰の目にも見えない、自分にも見えない自分の中の自分を敢えて二次元世界に描き出した作品こそがカッパチキンの表現世界であり、カッパチキンという名の覆面に込められた意味のように感じるのです。

彼女が描きとめる瞬間、それはまさしく彼女が彼女の中に存在する自分との対話の瞬間であり、その心の中の自分が語りだすものとは、実は彼女が特別に有しているものではなく、我々すべてが人間誕生から変質することなく持たされた人間共有の心であるということを、作品の中に描かれた人間に酷似した不思議な生き物が我々の心の中にいる自分に語りかけるように感じるのです。


カッパチキンが描く不思議な生き物と正面から向き合い、自分の中にいる自分と3人で対話すると、そこからは現実社会の中で計られつづけている自分とは違う本当の自分とは何だったかを感じることがきっと出来ると思います。


【この展覧会について】
本展は彼女がこの展覧会のために描きおろした新作12点と、新作のフラッシュアニメを展示致します。テーマであるcolors of life という言葉が示すとおり、彼女が独自に紡ぎだした不思議な生き物たちが、現在彼女の中にある人に伝えたいという強烈な想いを、見る者に寒色から暖色、中間色と様々な色という言葉をかりて語りかけてきます。。
新作のフラッシュアニメは彼女が伝えたい表現内容を言葉・絵画ではなく、動画という分かりやすい手法を使い表現しております。作品を見、フラッシュアニメを見ていただきますと彼女が切に伝えたいものが十二分にご理解いただけるのと同時に表現者としての彼女のこれからの可能性を強く感じていただけると思います。
【作家プロフィール】
1980/09
大阪に生まれる

2004/03
京都造形芸術大学芸術学部日本画コース卒業 

2004/03-2005/06
カナダで、アルバイト、ボランティアなどを経験しつつ、制作活動を続ける

2007/01
WEBサイト『kappachicken』を立ち上げる

2008/09,2008/11
個展『KAPPA CHICKEN - solo exhibition』(高松天満屋アートギャラリー)

2009
Kappa Chicken solo exhibition 『colors of life』 (BAMI gallery)
日本芸術センター第3回公募展 入選
第13回上海アートフェアー 出品

2009/11
solo exhibition『不器用な色たち』(高松天満屋アートギャラリー)

2010/2 
solo exhibition『不器用な色たち』(BAMI gallery)

2010/09
第14回上海アートフェアー出品
『コンテンポラリーアートの扉』(高松天満屋美術画廊)
第23回美浜美術展 入選
第6回世界絵画大賞展 入選
日本芸術センター第4回公募展 入選

2011/03
solo exhibition 『silent color』 (BAMI gallery)

-現在-
WEBデザインのアルバイトをしながら制作活動中