NEWS
2018.07.08 [Schedule] はじめての備前焼展

soft blue

hidden color
『嬉しい』『悲しい』『寂しい』『楽しい』『怖い』……。
わたしたち人間は感情を形容詞に変換し、言葉や文字という記号を使ってそれらを表現する生物です。でも、その作業の行程で 形容詞を「色」に変換してしまう人がいる。
それが アーティスト、Kappa Chickenです。
今回の『 colors of life 』というテーマの通り、彼女の描く世界は色彩で満ち溢れています。
「人生の色」「命の色」、そういう壮大な意味にも取れますが、それよりはむしろグラデーションのように刻々と 微妙に変化していく日常の感情の移ろいを指しているのではないかと、彼女との会話の中でわたしはそう感じました。

彼女の作品には詩が書き添えられています。それは淡々と穏やかな、しかし切なく感傷的で、青いアザを押したときのような鈍い痛みを伴う感覚があるのに 触れて見ずにはいられない、とてもデリケートなことばのリズムです。しかし“ことば”そのものよりもやはり、描く行為が彼女にとっては呼吸そのもので それをやめてしまうということは心臓が鼓動を打つのを止めてしまうのと同じくらい、彼女にとっては辛く苦しいことなのです。
そんな彼女が最も固執し細心の注意を払うのは、いかにその瞬間の感情を色に置き換え、色に託すか、というところにあるのですが…

 … わたしは、彼女の描く『黒』の世界に不思議と色というものを強く感じるのです。
彼女の創り出す『黒』には その静謐さと重厚感の中に、祈りにも似た切望、穏やかな安らぎ、激しい情熱、深い悲しみ…人の持ち得るあらゆる感情が塗り込まれています。それらの感情が各々に持つ“色”が無数に重なり、混ざり合った究極がこの『黒』なのであり、ひとたび何かでその『黒』を引っ掻いたなら その下には隠された無数の彩りが現れるのではないか…という錯覚さえ抱かせます。
『 hidden color 』-。その作品はタイトルが示す通り、色にこだわる彼女があえて『黒』をもって 込み上げる感情を極限にまで抑えてミニマルに描き出した作品です。

人とも妖精ともつかぬ生き物。-それはなぜ彼女の作品の中に登場するのか?
頭が大きく、瞳のないまなざしは胎児の様でもあり、ひょろ長い手足は大人の様でもあります。
彼女は言います。-『 人間の外見は千差万別だけれど、私が描きたいのはそういう目に映るもの全てを剥ぎ取った、人間の本質なんです。性別・国籍・年齢・肌や髪の色…他にもいろいろ個体差は違っても 持っている本質はきっと同じはずだと思うから…。 』-
完璧ではない。だからこそ人間って、生きるって、愛しいことなんだよ…という、人生を俯瞰したような視点で描きながらも、彼女には、彼女が好み 少なからず影響を受けたムンクや鴨居玲に共通する生への不安・焦り・孤独というものが根幹にあります。だからこそ両者のように、自身の内面を投影させる鏡の役割として“自画像”を描いているのかもしれません。 
ただし、今の彼女は自分というフィルターを通して排出される“かたちなきもの”の表現手段として作品を描いているに過ぎず、テーマとしては非常に脆弱な部分があります。その点では未だ彼女は発展途上で、彼女が自分の殻を破り 現代の社会、そこに生きる全ての者とそれらを取り巻く環境と対峙した時、作品もまた変化を見せるであろうし、そうであることをわたしは期待しています。

過去の彼女の作品にはまだ人間の面影が多く残っているものがあります。しかし最近の作品は“ひとのかたちであって、ひとではないもの”へと研ぎ澄まされてきていることがわかり、そのことが 彼女がより人間の本質を見出そうとしている証しであるかのように思います。
計算のないまっすぐな眼差しと 静かで強い意志を持って、Kappa Chickenはこれからもずっとこのテーマを追い求め、描き続けていくことでしょう。