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朝の公園
朝、通勤途中にいつも通る公園。


みんなが忙しそうに、少し難しい顔をして早歩きでそれぞれの仕事場に向かう、
そんなせわしない朝の雰囲気が、
その公園を通る間だけは、
少しゆるやかになるように感じます。


昼間のような明るく賑やかな公園ではないけれど、
たくさんあるベンチに、ポツリポツリと人が座っていて、
缶コーヒーを飲んだりしながら、
ぼーっと公園の緑を眺めていたり、
新聞や本を読んだりしています。


私は、いつも自転車で通勤しているので、
その公園を通る時間といえば、ほんの30秒ほどなのですが、
そのほんの少しの時間がすごく好きで、
ついつい、その公園に入るとペダルをこぐ速度をゆるめてしまいます。


でも、その公園を出れば、すぐにまたビルだらけになって、
その間にウジャウジャ人がいて、
その間にビルがあって、
その間にまた人がいて、ビルがあって、人がいて…。
そういう、なんだかものすごいものに飲み込まれていってしまうんですが。




ところで、
この通勤途中に通る公園で、今から一年ほど前にこんなことがありました。
ちょうど福田康夫元首相が突然の辞任表明をし、
世間が「また首相が変わるのか…。」と、そんな雰囲気に包まれた、
その次の日の朝のことでした。


その日の朝、
珍しく時間に余裕があったので、
私は、その公園のベンチで少し休んでいくことにしました。
しばらくすると、ホームレスらしきおじさんが、私の隣のベンチに腰掛けました。
そして、持っていたラジオをベンチの端に置きスイッチを入れました。
おじさんは私に気を使って声をかけてくれました。
「あっ、ラジオつけてよかった?」
「え?あっ、もちろんです。どうぞ、どうぞ。」


しばらく、そのラジオの音を何気なく聞きながら、
公園の木を眺めていると、
おじさんが、こっちを向いて、ポツリと言いました。
「昨日、福田首相やめたなぁ。」
「えっ、あっ、そうみたいですね。」
「首相でも、簡単にやめれんねんなぁ…。」


何故か、ちょっと重たいひとことに感じてしまいました。
そのおじさんの言い方は、
単なる政治批判というよりは、
自分の人生を振り返っているかのような感じがして…。
(私の思い違いかもしれませんんが。)


きっと、生まれつきホームレスの人なんて、ほとんどいないはずで…、
ということは、
このおじさんも、社会の中の何らかの役割をやめて、
今のような状況になったということ?

いったい何をやめたんだろう?
それをやめるに際して、たくさん辛い思いをしたんだろうか?
その役割は、今のような生活を選ぶくらい、重たいものだったのだろうか?


その後、しばらく、
おじさんとたわいない世間話をしていましたが、
時間がなくなってきたので、
「すいません。そろそろ、行かないといけないんで。」
と言って、私は自転車に乗りました。
おじさんは、威勢よく、
「あっ、そうかそうか。じゃあ、姉ちゃん頑張ってな!」
と声をかけてくれましたが、
自転車をこぎ出そうとした私の後ろで、おじさんが小さな声で呟きました。
「おっちゃんは、もう疲れたわ…。」


おっちゃんは、もう疲れたわ…。
おっちゃんは、もう疲れたわ…。


会社に着くまでの間、この言葉がずっと頭から離れず、
私なんかには想像もつかないはずのおじさんの過去について、
勝手に少し思いを巡らせてしまいました。

おじさんが弱すぎたのか…。
世間が厳しすぎたのか…。


この日、会社のビルのドアを開ける時、なんだかいつもより少し重たく感じました。
そのドアは、私にとっての一つの社会の入り口であり、
そして、その社会で
(いや、正確に言えば、この社会だけではなく、
私にとっては人と接することすべてが社会の始まりであり、
その、あらゆる社会において)
私は、お世辞にもうまく生きているとは言えず、
毎日が重たくて重たくて、本当に重たかった。


でもね、おじさん、
今の私は、
一年前のあの頃よりは、
少し、ほんの少しだけ、軽く生きられるようになりました。

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ごあいさつ
はじめまして、カッパチキンです!

人物画、絵本、フラッシュアニメなどを制作しています。
自分の感じたこと、思ったことを、
作品を通して表現していきたい、と思っています。


このブログでは、
日常のことや作品のこと、それから昔の思い出なども交えつつ
ちょこちょこ書いていけたらいいな、と思います。

考え過ぎると深みにはまって書けなくなりそうなので気をつけます。

それでは、どうぞよろしくお願いします!


*制作物をまとめた自作のサイトもありますので、よかったら覗いて見て下さい。
kappachicken -絵を描く-

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