Augmentation
2008
改善
H90.9 x W72.7 cm
30 F
acrylic on canvas
(c) 2009 COMBINE

この作品では開口部という概念、つまりオントロジカルな要素をより深く探求している。異なるレイヤーへと広がる開口部は、僕達の暮らす21世紀の現実の外側に展開する新次元を垣間見せる。作品は、僕らがまだ気付いていない未知の認知レベルを描き出している。

ちょうど類人猿がシェークスピア文学に込められた微妙なニュアンスや、都会に林立するガラスと金属製の巨大なモノリス群に見紛うビルと商業主義との関係性が理解できないように、今の僕達にはそれを正しく認識することなどできない。31世紀の生命体ほど優れた認知力を持ち合わせていない僕らは、ここでも再びシンボルと向き合うことになる。

僕の解釈だと、作中の矢印は発展や相互接続を、鳥と少女は生命体の存続を表すシンボルで、生命は新たなるハイパースペース(超空間)への突入にも耐え、生き延びることを象徴している。しかし、どんなシステムにも必ずバグは存在するものだ。

ここでのそれは旧時代の軍事カルテルによって開発され、迷子になったAI=人工知能だと僕は解釈している。とうの昔に死んでしまった制作者達がどんな意図で自分を作ったのか、そいつはもうすっかり忘れてしまっている…まあ、これも僕の推量に過ぎないのだけれど…

※レイヤー:画像をセル画のように重ねて使うことができる機能のことである。レイヤとも呼ばれる。日本語
では層、重ね合わせの意味である
※モノリス群:石柱、記念碑、オベリスク(神殿などに立てられた記念碑(モニュメント)の一種。)等の人工物、およびウルル(エアーズロック)、ストーンマウンテン等の巨石を指す
※バグ:コンピュータプログラムの製造(コーディング)上の誤り・欠陥を表す
※カルテル:価格や生産数量、販売地域などを協定すること