Apollo Forgotten 2
2008
忘れられたアポロ計画 2
H130.3 x W162.1 cm
100 F
acrylic on canvas
(c) 2009 COMBINE

この2部作の上部パネル『オントロジー的災難』はカオスの情景を描き出している。まずは一般に知られていないオントロジーという言葉について定義しておくべきだろう…簡単に言ってしまえば“リアリティ・ハッキング”、つまり現実の本質そのものを操作し改造するテクノロジーのことである。ネコ達は巨大な超次元ロケットシップのようなものを操縦している。(僕達にはミサイルとしか思えない物体は、別の用途に使われているようだけど…)どうやら、ネコ達には様々な世界を生み出すパワーがあるようで、宇宙船を使って小さな惑星を芽吹かせている。なぜネコ達がこれほどの技術的進歩を果たしたのか、疑問に思うかも知れない。

ところが…実際そうなったとしても全然おかしくないのだ。今日の人間が機械化を進めた結果、世界のコンピューター知能密度は増大する。すると一種の暴走状態が生じてくる。取るに足らないテクノロジーをひたすら大量に生み出す行為にひたすら没頭しているうちに、僕達はいつの間にか世界の本質を変化させてしまうのだ。やがて、全ての動物、もしかすると僕達を取り巻く物質のハローですら(今日の人類を遥かにしのぐほどの)超知能を持つようになる。

しかし、そんなふうに発展した知能はどこか不自然で、機械的だ。ほら、ここではネコ達が時空構造を引き裂いてしまっている。所詮、ネコはネコ。物をズタズタに裂くのが好きな生き物だ。つつき回しておもちゃにしているだけ。ただの遊びなのだ。時空なんて、ネコ達にとってはどうでもいいこと-その証拠に、宇宙船の上では一匹の猫がまどろんでいる。

※オントロジー:存在に関する体系的な理論。人間が対象世界をどのように見ているかという根源的な問題意識をもって物事をその成り立ちから解き明かし、それをコンピューターと人間が理解できるように書き記したもの。

※カオス:混沌、無秩序。ほんのわずかな初期条件の違いが予想もつかないほど大きく違った結果を生む現象。

※リアリティーハッキング:これは造語である。ハッキングそのものの意味は電子回路の設計や工作を経て、コンピュータシステムの動作やソフトウェアの機構を詳細に解析し必要に応じてプログラムを改変したりする事であり、文意から想像的なものを感じてもらうしかないと判断します。