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レンブラントの技法とレンブラント派

今回の個展では2点を模写した。
1つはレンブラントの作品、
もう一つはロンドンナショナルギャラリーに所蔵されているレンブラントのフォロワーの作品『A Man Seated Reading at a Table in a Lofty Room』である。
残念ながら調べても作者の名前が分からなかった。
レンブラントの有名な弟子、門下生ならば名前がはっきりしているし、署名でわかることも多いが、英語でフォロワーと記載されていることからレンブラント様式を使って描かれた無名の画家の作品ということなのかもしれない。
いずれにせよ、レンブラントの影響を受けた絵描きということには違いないだろう。




原題『A Man Seated Reading at a Table in a Lofty Room』
  『部屋で佇む男』
  



レンブラントの作品には常に真贋の問題が付きまとっている。ついこの間までレンブラントの作品と思われていたものが覆されることはよくある。私の好きな「黄金の兜の男」もレンブラントの作品ではないらしい。

前回の記事で少し触れたが、17世紀当時の画家というのは、現在の日本の漫画家のようなシステムで工房スタイルをとっていた。フランドルの画家ルーベンスなどは分業制をとり、工房内の職人と作業を分担していたようである。なのでどこをルーベンス本人が担当していたのか分かりやすい。また絵の注文者とのやりとりの文書も残っているようでどの部分をルーベンスが描くか、何日くらいで仕上げたかまでわかっている。作品によっては動物を描くのが得意な画家に動物を描いてもらったりと外注をして仕上げている作品もある。このようなことができた背景として油彩の技法や様式が統一されていたことことがあげられる。描き方が同じなので作者が変わったとしても違和感なく同じ世界観で見ることができたのである。また、弟子にはヴァン・ダイクなど画家として有名になったものもいるし、本人も外交官として活躍しており、かなり仕事のできる男のイメージを受ける。

一方、レンブラントはというと工房の運営にしても割といい加減で、自分で全部描くか弟子や他人に全部描かすかという状態だったようだ。また弟子が描いたすぐれた作品に自分の署名をしたり、自身の自画像すら弟子に描かしていたこともあるらしい。彼の技法自体は難しいものではなく、優秀なものであれば模倣することができた。そこが真贋をややこしくしている原因らしい。少しでもルーベンスの手が入っているのと比べ、一見レンブラント風に見えてもまったく本人が関わっていないのであればコレクターとしてはたまったものではないだろう。のちに破産したり悲惨な目にも合うレンブラントは割といい加減でだらしない人だったのだろう。その辺りのことを学生時代に知り、芸術家に聖人のような潔白さを求めいた私は非常に幻滅したのであった。

 しかし、弟子が模倣しやすい技法や作風を確立させた点については優れていると思う。模倣しやすいということは技法がシンプルで分かりやすいということだ。明暗のコントラストを強めたり明るい部分の絵の具を厚塗りしたりと少し観察するだけでも特徴ははっきりしている。それらを取り入れるだけで手軽にレンブラント風の作品に仕上げられる。シンプルかつ効果は絶大なのだ。そして今なお熱狂的なファンがいることからも明らかである。絵画の世界だけでなく舞台照明やインテリア設置の際にレンブラントライトという名前で、ライティングの演出方法は広く知られている。

 今回、2点模写したが私も特別なことはほとんどしていない、伝統的な油彩の技法を守りレンブラントスタイルを意識して描いただけである。スタイルを模倣した作品の無名の作者も模倣するくらいだから、レンブラントへの尊敬や憧れもすこしはあったに違いない。そう思うと私も時間は隔てているがレンブラントのフォロワーであり、レンブラントの一派であるといえると思う。というか思いたい。

松本央 solo exhibition 『私淑の憧憬』

2018.05.17 (thu) - 2018.05.25 (fri)

OPEN 12:00~18:00

期間中無休
※最終日午後4時閉廊

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