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アマビエ版画作品について②
先日BAMI galleryのオンラインストアがオープンし、
アマビエの版画を3種類出品させていただいております。

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さて、前回のブログではアマビエ版画制作についての経緯などを書きましたが、
今回は各作品について創作のプロセスやコンセプトを書いていきたいと思います。


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「アマビエ」について




「アマビエ」 メディウム剥がし刷り版画 版サイズ233×147mm

まずはアマビエのもつ特徴(嘴がある、髪が長い、鱗がある、三本足、など)を頼りに色々とアイディアを出します。
 

伝言ゲーム的に単純化されたり、あるいは誇張されたりするのが

アマビエの面白さだよなぁ...なんて考えたりしながら自分なりのアマビエ像を探ります。



「アマビエ」の原型です。

アマビエは色々な生物の組み合わさった"キメラ"のようで、
「髪が長い」=リュウグウノツカイ?
から想像を膨らませてアマビエとして成立するように描きました。

「三本足」についてはアマビエを発見した人が角度によって三本足に見えた可能性もあるな、とか、

そもそも三本足の動物というのは大変縁起の良い場合が多く、
有名なものでは日本サッカー協会のロゴである八咫烏(やたがらす)がいたり、

中国の三本足の蛙の妖怪、青蛙神(せいあじん)がいたりします。
奇しくも青蛙神は天災を予知する力をもつ...とされていたり。

そういった古来より伝わる伝承がアマビエにも自然と組み込まれたのではないか、、
などと推測して描いていました。


イメージが固まったのでこれを清書します。



もう版画と変わらない線になりました。

この清書を版に反転させてトレースし、製版していきます。

作業工程はYouTubeの方で見ることができるので、よろしければご覧ください。


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「ひょっこり」について



「ひょっこり」 メディウム剥がし刷り版画 版サイズ233×147mm

一枚目の「アマビエ」を考えている時に出てきたものすごく単純化したアマビエを使いつつ何かできないかと考えました。


単純化して可愛らしくなったので、それに合った状況なり仕草なりを考えていきます。
ぱっと思いついたのは何かの物陰から隠れてひょっこり顔を出しているイメージ。
でも一体どこから顔を覗かせているんだ...。

少し初心に立ち返って考えてみました。
なぜ江戸時代から時を超えて、こんなにもアマビエが流行り出したのか。
やはりコロナウイルスという疫病に対して、早く終息してほしいという祈り、祈願の意味合いが強くあると思います。
祈願か...。祈願...。奇岩?

日本にはゲン担ぎと言霊の文化があります。

ご縁がありますようにとお賽銭に5円を入れたり、
受験に勝つためにカツ丼を食べたり...。

ダジャレかよ...と思うかもしれませんが、祈願の意味を込めて奇岩を取り入れてみることにしました。

余談ですが、奇岩も色々あり、今回描いたのは太湖石という石です。
中国蘇州府の太湖から産出される石灰岩で、
湖の波や風雨の浸食を受けて石の表面に多数のくぼみや穴があるのが特徴です。

道教ではその穴が別世界への入口であると考えられているという事もあり、
人間界とは別世界の妖怪アマビエがその穴から見えていたら面白いなと考えました。



奇岩に隠れたアマビエのイメージを固めていきます。



アマビエが見えすぎていたので実際の版ではアマビエの姿はもう少し左寄りにして隠しています。

この原画を版にして刷ったのが「ひょっこり」になります。

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「海の底から」について



「海の底から」 メディウム剥がし刷り版画 版サイズ233×147mm

こちらもデフォルメしたアマビエの姿です。

水面に現れたアマビエの姿が伝承にあるアマビエ像なのかもしれませんが、
アマビエが生きているとして、ずっと水面にいるわけではないだろうと考えてラフを描きました。


(上二つのラフはまだ水面で考えていますね...)

海底からぷくぷくと泡を出して遊んでいるようなイメージが思い浮かびました。

横構図のラフ案でしたが泡が上に向かって登っていく様子が表現しづらいので縦構図にし、
背景に魚のシルエットを描いて空間が広がるようにして清書していきます。



この作品を描いている時にたまたまかけていたラジオから、
ディズニーのリトルマーメイドの曲「Under the sea」が流れてきまして...
本当にたまたまでしたが、もうタイトルはこれしかないと思い「海の底から」にしました。


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如何でしたでしょうか。

創作プロセスを見て少しでも楽しんでもらえていたら幸いです。


2020年6月19日現在、日本では一時は大分おさまったかと思いきやまたじわじわと感染者が増えてきています。

皆さんも、そして自分も気をつけつつ...

早くこの状況が収束することを祈願して。。


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アマビエ版画作品について①
先日BAMI galleryのオンラインストアがオープンし、
アマビエの版画を3種類出品させていただいております。

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さて、今回のブログではアマビエ版画作品について、
何故アマビエ作品を創ろうと思ったのかという経緯や
版画に挑戦してみた所感をお伝えしていきたいと思います。

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2020年に入り、1月・2月の京都日本画新展およびBAMI galleryでの個展の頃から
段々と新型コロナウイルスのことでざわざわしはじめ、

遂に4月には緊急事態宣言が全国に発令され不要不急の外出は自粛を余儀なくされました。


そんな鬱屈した状況の中でSNS上に浮上した一匹の妖怪。

「アマビエ」

もう既にご存じの方も多いと思いますが、
江戸時代の肥後(熊本)の夜の海に現れたというその妖怪は、
6か月の間豊作だが疫病が流行るから私の姿を描き写して人々に見せよ
と言って海に消えていったそうです。


江戸時代の瓦版に描かれたアマビエ


「描いて拡散する」という内容が今の時代にマッチし、
アマビエの姿はインターネット上で日本のみならず世界にまで拡散しました。


一刻も早く病の蔓延が収束してほしいという純粋な祈り、

自らがどうすることもできない病や未来への畏れ、

この伝言ゲームに参加してみたいという単純な欲、

伝承に則ったアマビエ、自分なりの解釈を加えたアマビエ、

イラスト、漫画、絵画、版画、陶、木彫、フィギュア、etc...

様々な想いが、様々な媒体で「アマビエ」という一つの形態をとってアウトプットされている現象に面白さを感じたのと、

昨年「水滴モンスター」という個展で妖怪や霊獣を描いており、
その時考えていた事に繋がる部分もあるので今回アマビエを描いてみようと思いました。




スケッチブックに何パターンか描いているうちに、
一点ものの絵画にするよりもアマビエの性質から考えて版画という作品形態をとった方が良いと考え、
版画に挑戦してみようという思いが湧いてきました。


ガリ版にするのか、木版にするのか、、、

色々調べていくうちに「メディウム剥がし刷り」という技法がある事を知りました。


ボール紙にクラフトテープ(紙のガムテープ)を貼りつけ、
インクの無いボールペンで凹ませながら描いて、
その凹んだ線にアクリル絵具を詰めて、
アクリルメディウムを塗って、
乾かないうちに紙に版を貼りつけて、
乾いたら慎重に剥がす。
という技法です。(文字にするとややこしい...)


今まで聞いたことも見たこともない技法でしたが、だからこそ興味を持ったので挑戦してみる事にしました。


実際に彫った(凹みを付けた)版

YouTubeにも制作工程動画をUPしていただいたのでご興味ありましたらご覧ください。

(余談ですが、アマビエ版画に挑戦中の折、ギャラリーから新設するオンラインストアへ出してみないかとお誘いいただき、ネット上での出品・発表となりました。)


普段絵画で行っているのは、頭の中のイメージを絵具を使って画面に直接表現する行為ですが、

版画はイメージを反転させて版にし、それを刷り出す事ではじめて思い描いていた正像になる。

というのは新鮮な感覚でした。


イメージ通りにいかなかったり、作業の中でコントロールできない部分があったり。
普段いかに力技で描いているのかという事を思い知らされたような気がします。



「アマビエ」
ニューブレダン紙、アクリル絵具、メディウム
エディション数10部
版のサイズ 233×147mm
額のサイズ 396×304×22mm (H×W×D)


「ひょっこり」
ニューブレダン紙、アクリル絵具、メディウム
エディション数10部
版のサイズ 233×147mm
額のサイズ 396×304×22mm (H×W×D)


「海の底から」
ニューブレダン紙、アクリル絵具、メディウム
エディション数10部
版のサイズ 233×147mm
額のサイズ 396×304×22mm (H×W×D)


次回のブログでは各アマビエ作品の内容について書いていこうと思います。


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